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今回ご紹介するのは、急に右前足がうまく使えなくなったダックスフンドさんのお話です。
動画はこちら
以前にも、腰椎椎間板ヘルニアの症例をご紹介しました。急に後ろ足が動かなくなったり、立てなくなったり・・・手術で良くなったもの、手術ではなく内科的治療でよくなったものなどをご紹介しました。
今回の症例は腰椎(腰の部分の背骨)ではなく、頸椎(首の骨)で椎間板ヘルニアが起こってしまったようです。
動画をご覧になったように、右前足がうまく前に運べず、後ろにひっくり返っており、顎でなんとか立ち上がろう、歩こうとしています。
いくつかの神経学的検査から頸椎の1-5番目のいずれかに位置する脊髄神経に障害が出ており、重症度としては5段階中2というところでした。
この段階なら内科的治療法で良くなる可能性も高く、入院による絶対安静で内科的治療法を開始しました。
治療を開始して1週間。
動画はこちら
まだ、完全とまではいかないものの、普段の生活には支障のないレベルにまで歩行状態は改善してくれました!
とりあえず、もうしばらく安静期間をお願いして自宅での治療に切り替える事ができました。
ダックスフンドで起こる椎間板ヘルニアのそのほとんどは胸腰部で起こります。
また、他の犬種を含めてみても同様に胸腰部で80%、頸部で15%となっております。ちなみに、頚部で起こる椎間板ヘルニアとしてはシーズーやペキニーズ、ビーグルで比較的多くみられるようです(これらの犬種では胸腰部より頚部の方が多い)。
ダックスフンドは軟骨異栄養性犬種に該当し椎間板ヘルニアの発症率は40-50%ともされています。また、再発率も高く今後の予防がとても重要となってきます。
具体的な予防法としては、縦にジャンプする癖のある場合、四足歩行の動物ではダイレクトに背骨に衝撃が伝わり、クッションとなる椎間板が破れやすくなります。肥満にさせないことはもちろん、ソファーなどの高いところからの飛び降りは控えるべきです。
また、背骨をとりまく靭帯や筋肉も直接背骨にかかる負担をかなり軽減してくれています。従って、ある程度状態が安定したら適度な運動でしなやかな筋肉をつけることも必要になってくると思います。
「家では本当におりこうで、うちの子に限ってそんな危ないところに出入りするはずが・・・」
お散歩コースで草むらがある場合はご注意ください。
案外、身の回りにマダニは潜んでいます・・・
うちの子に限って・・・その油断、大丈夫ですか?
もし、マダニに噛まれたら、自宅で無理に引っ張ってはダメです。
痛がることがあったり、マダニの頭部が皮膚に残ってしまうことがあります。
動画のように、簡単に、そして確実に頭部を残さずにマダニを除去する方法があります。
動画はこちら
マダニに噛まれたら、当院に受診してください。
そして、噛まれてからの対処より、予防をオススメします!
今回ご紹介するのは、わんちゃんの膀胱結石のお話です。
犬にも猫にも膀胱結石があります。これまでにも、ウサギやモルモット、チンチラなどいくつかの動物での膀胱結石をご紹介してきました。
当然、人間にもあります。
結石の成分はそれぞれ異なり、犬や猫の場合、8割以上はストルバイト(リン酸マグネシウムアンモニウム)とシュウ酸カルシウムのどちらかだと言われています。それに対して、人間ではシュウ酸カルシウムがほとんどだと言われています。
結石が出来てしまう原因は人間で分かっていることほとではありませんが、いくつかあって、食餌の影響、膀胱内の感染症、その子の代謝の問題などが挙げられます。
今回のわんちゃんは、おそらく体質なんでしょうか、以前より市販食では尿中に結晶が形成されてしまうことがわかって、療法食を食べていました。それにも関わらず、レントゲン検査で膀胱内に10個程度の大きな膀胱結石が形成されてしまいました。
食餌療法で溶かすこと治療もありましたが、相談の結果、外科的に摘出することになりました。人の治療でやられているように体外から衝撃波を与えて粉砕する方法がとれないので、開腹手術で摘出するのが一般的です。
膀胱結石は取り除いておしまいっていう病気じゃないので、予防こそが重要な命題となっております。結石分析して適切な食餌を続けていきましょう。
今回ご紹介するのは、胃がお腹の中でひっくり返ったグレートデンさんのお話です。
この病気は大型犬や超大型犬で比較的一般的にみられる急性疾患で、致死率は高いとされています。胃の中にガスが異常に貯まってしまって、運動などが原因となり胃がひっくり返って(胃捻転)ねじれてしまいます。
そうなると胃も大変なことになりますが、その周辺にある臓器、脾臓や消化管にも問題が起こったり、門脈や後大静脈などの太い血管が拡張した胃で圧迫されて虚血や低酸素、不整脈がみられることもあり、そうなると致命的になることも多いのです。
そういった理由から大型犬や超大型犬は、胃拡張捻転の予防的手術を避妊や去勢手術と一緒に行う事もあります。うちの頼丸も去勢手術のときに、一緒に胃を腹壁に固定する手術をして胃がひっくり返りにくいようにしてあります。
今回のグレートデンさんは急にぐったりしてご飯もたべず、嘔吐のしぐさをして苦しそうだという事で来院されました。お腹がポンポンに膨れています・・・。レントゲン検査をしてみると、胃の中にガスが充満しており、胃の出口が反対側に位置していました。
やはり、胃拡張捻転症候群でした。
こうなると、緊急手術です!
すぐに開腹手術して、胃と十二指腸を正しい位置に整復したのち、再発予防のために腹壁に胃の一部を固定しました。
手術はうまくいって、術後の経過も良好です。早期発見できたので、大事にはいたらなかったようです。良かったです。
今回ご紹介するのは、子宮に膿が貯まってしまった柴犬さんのお話です。
子宮に膿が貯まってしまう病気、子宮蓄膿症といいます。これまでカメやセキセイインコ、ハムスターやハリネズミさんなどでも同じ手術、卵巣と子宮の摘出手術してきましたが、ここまでギリギリの状態で手術をしたのは初めてといっていいぐらい、リスキーな手術となりました。
まずは来院当初の、すべてを諦めてしまったような悲しい目をした柴犬さんの様子をご覧下さい。すべての検査および処置にも無抵抗、なすがままでした。
動画はこちら
エコー検査、細胞診、血液検査の結果などから子宮蓄膿症と診断されました。
さらに良くない事に、急性腎不全を合併して重度の脱水と高カリウム血症がみられました。
とても危険な状態ではありましたが、ある程度輸液をして少しでも状態が改善した後、手術をするしか助かる可能性が考えられませんでした。
麻酔の導入時、心拍数と血圧がみるみる低下していきました。
「これは非常にまずい・・・」
もう手術どころではありませんでした。
すぐに麻酔を中止して、アトロピン(心拍数をあげる注射)とドパミン(血圧をあげる注射)をしてまずはバイタルの安定化を第一にできることをしました。
しかしながら、無情にも心拍数は40と危機的状況・・・血圧も測定不可能なくらい下がってしまっています。
その後輸液をどんどん追加して、徐々にバイタルが改善してきました!
とにかく、このこの生命力にかけてやるしかない・・・そう覚悟を決めてお腹を開けたとたん・・
また心拍数と血圧が一気に低下して、最初の危機的状況に戻ってしまいました。
お腹の中には、破裂寸前にまでパンパンに腫れた子宮がありました。開腹したせいで、腹圧が一気に下がって血圧が下がってしまったのかもしれません。またしても麻酔を切って、バイタルの改善に全力を注ぎながら平行して手術を進めていきます。麻酔をしていなくても、覚める気配はありません。不整脈も出始めました。
「手術中だけどもう、危篤状態にあることを飼い主さんに電話しなきゃ・・」
飼い主さんとこの子の入院と手術の手続きをした後の別れ際、
「また後でね、元気になって帰っておいで・・・」
そうこの子に言い残して帰られました。
その想いに応えられずに、この残念なお知らせをしなければならない・・・自分の中でも気持ちの整理が出来ないでいた時、
「先生、自発呼吸が再開しました!心拍も戻ってきました!」
肝臓の腫瘍切除でも頑張ってくれた優秀なスタッフがいち早くその変化に気がつき、適切な対処をしてくれたのです。
その後は、とても順調に事が進み、無事手術が終わり、麻酔からも正常に覚醒してくれました。すぐに飼い主さんに一報をいれます。
「手術は無事終わりました。危ない所でしたが、本当によく頑張ってくれました。術後の経過次第ですが、一番の山場は越えたと思います」
それからはみるみる元気になって、次の日には約1週間ぶりの食餌をしてくれました。
急性腎不全もほぼ正常にまで改善、約1週間の入院で無事退院の日を迎えることができました!
動画はこちら
今回はとても運がよかった・・・僕はそう思います。
子宮蓄膿症は発見が遅れると死んでしまう、非常に怖い病気の一つです。できれば若いうちに避妊手術をして病気の予防に心がけていただけると幸いです。